・・・古い猟銃を持ち出して、散弾をこめた。引鉄を握りしめると、銃声がして、畝にたかっていた鳩は空中に小気味よく弧を描いて、畠の上に落ちた。 しかし、すぐ、駐在所から、銃声を聞きつけた奴がとび出してきた。鉄砲の持主をセンサクした。だが、米吉はど・・・ 黒島伝治 「名勝地帯」
・・・おのれの愛情の深さのほどに、多少、自負もっていたのが、破滅のもと、腕環投げ、頸飾り投げ、五個の指環の散弾、みんなあげます、私は、どうなってもいいのだ、と流石に涙あふれて、私をだますなら、きっと巧みにだまして下さい、完璧にだまして下さい、私は・・・ 太宰治 「創生記」
・・・八月二十五日 晴 日本橋で散弾二斤買う。ランプの台に入れるため。八月二十六日 曇、夕方雷雨 月蝕雨で見えず。夕方珍しい電光 Rocket lightning が西から天頂へかけての空に見えた。丁度紙テープを投げるよう・・・ 寺田寅彦 「震災日記より」
出典:青空文庫