フランスの『マリアンヌ』という新聞に、ロシアの大文豪であったレフ・トルストイの孫息子にあたるジャンという少年が、浮浪児として少年感化院に入れられ、そこから脱走して再び警察の手にとらわれたときかいた「ジャンの手記」というもの・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・タタール人抑圧の悲憤にみちた物語は、文豪のトルストイも小説に書いている。帝政時代のロシア支配階級はその他多くの弱小民族を圧迫し生活権を奪うことによって豊沃な耕地を、森林を、鉱山と港とを自分の富として加えた。タタール民族ユダヤ民族は、自分らの・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
・・・ 今日の日本の諸風俗のありようというものは、つい先頃までは風俗描写の小説をもってリアリズムの文豪と称した一部の作家たちをも瞠若たらしめる紛糾ぶりである。その紛糾も、社会生活の諸要素が、ゆたかな雨とゆたかな日光とにぬくめられて、一時にその・・・ 宮本百合子 「風俗の感受性」
・・・ゴーリキイの誕生六十年記念祭にあたって、ソヴェト同盟・共産主義アカデミーで行われた討論は、ゴーリキイをもっとも重大な使命を果した文豪であるとした。〔伏字二十八字〕ロシア民衆の生活がいかなるジグザグの道をとおり、流血と犠牲をもって十月革命の大・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・例えば、一九二二年に楠山正雄氏とシュニツレル選集を編輯してその印税の全部を敗戦国の老文豪に送ったことも、単に山本氏が独文出身だからというだけの内面の動機ではないであろう。戯曲家としての氏が、自作の上演に当って劇場側の態度がわるい場合、勝手に・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
出典:青空文庫