・・・人生の各断面の語りて。写真がますます生活についたものとして扱われて来ていることは面白い。 宮本百合子 「きょうの写真」
・・・いろいろな事象がそれ自身の収拾つかない課題の生々しい断面をむき出しながら、益々幅と量とをましながら奔流しつつ十二月が来ている。 日々の生活感情がそのようだし、十二月号の雑誌をいくつか見ると、従来なら吉例的にたとえ外面からのことは承知でも・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・(此は余談ではございますが、当時大統領だったルーズベルトを中心にして、動いた各国王、特に露、独の心持は人間の生活の一断面として面白うございます。非常に面白うございます。不幸な露国皇帝が彼の死を死んだ運命の尖端 其から御飯を食べ、又少し本・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・『新日本文学』六月号「サガレンの文化――転換期の一断面」埴原一丞の文章の小原壮助に着目されている部分ではこうかいている。一九四七年、豊原市に二十人位の文学志望者があって、新聞『新生命』を中心に樺太文学協会をつくろうということになった。第・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・ それ等の窓々を渡って眺めて行く私共は、東京と云う都市に流れ込み、流れ去る趣味の一番新しい断面をいつも見ているようなものではないだろうか。受身に私共の観賞を支配される形ではあるが、一都市が所有する美の蔵の公平な認識者、批評家として、趣味・・・ 宮本百合子 「小景」
・・・何故なら、作家と作品との間にそういう甚しい分裂が生じたのは、この数年来文学の世界に真の現実諸関係を生かそうとせず、作家の恣意によって風俗の一断面を自身の鏡の下において眺めたり、思念の断片を一つの世界に拡大して見たりして来ていた文学への云って・・・ 宮本百合子 「昭和十五年度の文学様相」
・・・年齢と経済力とに守られて、若い幾多の才能を殺した戦争の恐怖からある程度遠のいて暮せたこの作家が、それらの恐怖、それらの惨禍、それらの窮乏にかかわりない世界で、かかわりない人生断面をとり扱った作品が、ともかく日本で治安維持法が解かれた直後のジ・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・私が何故そう奇麗でもない昼、夕刻にかけて散歩したかといえば、夜では隠れてしまう生活の些細な、各々特色のある断面を、鋪道の上でも、京橋から見下す河の上にでも見物されたからである。それに、昼間から夜に移ろうとする夕靄、罩って段々高まって来る雑音・・・ 宮本百合子 「粗末な花束」
・・・もしこの次にこの種の労作が期待されるのであったら、一読者の希望として、東洋をありきたりの東洋篇に分けず、東西相照し合う立体的関係に於て、この社会運動思想史の裡に綯いまぜて、東洋の断面をも示されたら、さぞ愉快であろうと思う。 更に、この著・・・ 宮本百合子 「新島繁著『社会運動思想史』書評」
・・・そうして、今は、二人は二人を引き裂く死の断面を見ようとしてただ互に暗い顔を覗き合せているだけである。丁度、二人の眼と眼の間に死が現われでもするかのように。彼は食事の時刻が来ると、黙って匙にスープを掬い、黙って妻の口の中へ流し込んだ。丁度、妻・・・ 横光利一 「花園の思想」
出典:青空文庫