・・・ 真個の女の人が扮しているのだから、洋服でも、河合武雄の着る洋服ではない型と味いとを見たい。 斯様な印象の後に来たので、「邯鄲」は、随分、お伽噺的な愛らしさで、目に写った。巧くこなしたものだと思う。色彩の調和が、気の利いた「犬」の舞・・・ 宮本百合子 「印象」
・・・私が毎日毎日通った時分、誠之は斯様に黒い木の門と、足の下でザクザクいう玄関前を持ち、大きなコの字形に運動場を囲んだ木の低い建物で出来ていたのです。 校舎が改築されたのは、何時であったか。私は、未だ一度も内部の模様を見知らない。又、見たい・・・ 宮本百合子 「思い出すかずかず」
・・・ 純粋に云って、詩と云うもののカテゴリーに入るか、如何うか、兎に角私にとっては、斯様な形式で書く唯一のものだ――私の詩と云える。 段々、かたくなく文字が流れ出す快感を覚える。何処まで、形式、内容が発達して行くか、 私にとっては、・・・ 宮本百合子 「五月の空」
・・・ 斯様に外国の作家を尊重する現象は直に自国の優秀な作品を持たないと云う事には成るまい。嘗て米国は Stevenson や Allan Poe を産んだのだ。けれども今 Kipling に匹敵する作家としては O. Henry と数え始め・・・ 宮本百合子 「最近悦ばれているものから」
・・・ 斯様な条件での従業で、婦人は明らかに以前より健康を保つ多くの可能性をもつのであるから、従って、生れて来ようとする子供らの胎内での条件もより発育のために有利に変って来ているわけである。生れるという主格の受動性を示す文法上での表現は、とり・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・私斯様な前提を置いてから、少し許り、私がこちらへ来てから「私」の感じた事を書いて行こうとして居ります。 可成種々あるような気も致します、が、先ず同性と云う点から、こちらの婦人に就いて私の思ったままを述べさせて戴きましょう。 厨川白村・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ 斯様に男の子の生れるのを喜ぶ風がありますが、また婦人から云えば、却って女の子を欲しがるのであります。それは男子は神様に仕えるのが第一で、主になって働くのは婦人ですから、親は働きの助けに女の子を欲しがるのであります。 やがて子供が相・・・ 宮本百合子 「親しく見聞したアイヌの生活」
空想のうちに描いている斯様ありたいと思う書斎の条件を並べます。 いつも静かで、変化の著しくない光線の入ること。窓も大きくとり、茂った常緑木の葉、落葉樹の感情ある変化を眺めうること。 湿気、火事の要心のため、洋風にし・・・ 宮本百合子 「書斎の条件」
・・・ 言語、習俗が著しく異った場合、斯様な誤謬は起り易い。而して結果としては、双方が見出すべき大なり小なりのよい発見を失って仕舞うのです。表面的の事象から先ず反撥心に支配されて、深い生活の内面、或はよりよい事実を見失うのは、どんなものに対し・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ 斯様にして彼は死にやがて葬むられたのである。 彼を知って居る者は皆彼の不運を歎いたけれ共其の死に様に関して唯一人の疑いを挾む者もなかった。 勿論それまでの成り行きは決してどの様な特別な形式も取られては居なかった。 彼は・・・ 宮本百合子 「追憶」
出典:青空文庫