・・・『新潮』は新年号に十五枚ぐらいの小説を十五人ぐらいにかかせているが、批評によると、短篇アンサンブルとしての効果なし。稲ちゃんも大変スタイルに留意して試みている。矢田津世子が書き、たい子がかいている。俊子さんの第三部は『改造』二月に出るでしょ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・むかし『新潮』などの慣例であった月評座談会の形式が『文学界』その他に新しい文学行政的顔ぶれで復活した。その席では、二十世紀のこの時期に動いている世界社会の苦悩、相剋、発展へのつよい意欲とその実験にかかわる文学の、原理的な諸問題について究明さ・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・今度新潮賞をうけることになったことや、それにつれてまた新しく『暦』の書評が書かれたりすることについて、壺井さんはどんな感想をもつだろうか。少し極りのわるい顔つきになって、何だか妙ねえ、というだろう。そして、心の中で、貰う賞金をいろんな子供や・・・ 宮本百合子 「『暦』とその作者」
・・・『新潮』十二月号には数人の作家たちが問いに答えて「転換期における作家の覚悟」という文章を書いている。それぞれにその作家の今日の心持が語られているわけなのだが、作家としての特徴を生かすことを語っている徳永直氏の文章が具体的で、わかりよかっ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・自然主義の系統から出発して、雑誌『新潮』によりながら、作品活動としては大衆作家として存在しているこの人が、文学の芸術性、その至上性というものについての論議に触れると常にピューリタン的な擁護者として立ち現れることは、一つの芸術の分野ならでは見・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ 二ヵ月ばかり前の『新潮』に同じ作者の「伊豆日記」というのがあった。伊豆の温泉での文壇交友日記のようなものであるが、その中に、「プチット・ファアデットを読む。この小説は自分には不満だ」とあり、その不満の理由として、ジョルジュ・サンドが、・・・ 宮本百合子 「生産文学の問題」
・・・という『新潮』に連載されている作品です。文学好きというような人には、そうとう読まれていると思う。 この「わが胸の底のここには」という題は、藤村の「我が胸の底のここには言い難き秘事住めり」という文句で始まっている詩からとられた題だそうです・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・『新潮』の杉山平助氏の論文、『文芸』の大宅氏の論文を熱心に読んだのは、恐らく私ひとりではなかったであろうと思われる。二人の筆者は、いわゆる転向の問題賛否それぞれの見解を今日の現象の上にとりあげ、内容の分類を行い、問題の見かたをわれわれに示し・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・『新潮』六月号に片岡鉄兵氏が「嫌な奴の登場」という題で小論をかいていられる。「近頃誰からも嫌われる、ふてぶてしい押の強い、ある共通したタイプの人物を小説に取扱うのが流行っている」しかし作者たちがそれを描く意図が常に明瞭でなく、そこに・・・ 宮本百合子 「文学のディフォーメイションに就て」
・・・ 九月号の『新潮』では「戦争と文学者」という項を設けて、この問題をとり上げている。作家が益々作家として生きんとする欲求はここにもそれぞれの作家の持味をもって表現されているのである。ダヌンツィオが飛行機で飛びまわってヒロイズムを発揮したよ・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫