・・・少数の職業組合が旧教の牧師の下に立って単調な生活をしていた昔をそのままに見せるこう云う町は、パリイにはこの辺を除けては残っていない。指定せられた十八番地の前に立って見れば、宛然たる田舎家である。この家なら、そっくりこのままイソダンに立ってい・・・ 著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外 「田舎」
・・・フランスの堅気な旧教的な美を代表するアントワネット。強烈な火の急流のようなアンナ、または男がいつも我流に女を愛して平然としていることその他、女性の家庭生活の不満に充分苦しみながら「でも、大半は婦人に敵対している社会で、一人で生活しなければな・・・ 宮本百合子 「アンネット」
・・・ 一九三〇年三月二十四日、七十五万人の勤労者がモスクワでローマ旧教運動反対デモをやった。プロレタリア作家もこの示威に参加し、作家クラブではこの問題についての特別講演会が持たれた。プロレタリア作家たちは、この問題を段々科学的に考えはじめた・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・しかも、フランスは旧教の国だから、「アジアの嵐」のなかの最も皮肉で愉快な場面、よだれをたらした赤坊のラマに帝国主義国の将軍が勲章をつけてお辞儀したり、おべっかつかったりする場面、反宗教的な場面をあらかた切ってしまってあった。暖いぷかぷかな場・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・アンナは、何だか旧教くさく、尼さんくさいからと云うので。 ロザリーは、どちらにもつかず、公平な態度を保っていましたが、アンナが夜中にまで、跪ずいてお祈を繰返すのには恐れました。 お祈はきまって一つです。妹のフロラが彼女に自分の幸運を・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
・・・フランスの旧教の尼僧教育にとじこめられて、白く脆い一輪の無垢な花弁のような貴族の娘が、結婚の第一日から良人に欺かれ、やがて息子にすてられ、悲惨にこの世を終った。そういう受け身な一生ではなく、女が自分から自分の道を選び、それに責任をもち、人間・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・第一に心づくことは、ドイツもフランスも、ロシアも、新教と旧教、ギリシャ正教などのちがいこそあれ、いずれも一般の常識は深い宗教的影響をうけていて、教育そのものが、宗教的教義の重石に窒息されている国柄であったということである。そういう宗教の独断・・・ 宮本百合子 「若き精神の成長を描く文学」
・・・それだからドイツの政治は、旧教の南ドイツを逆わないように抑えていて、北ドイツの新教の精神で、文化の進歩を謀って行かなくてはならない。それには君主が宗教上の、しっかりした基礎を持っていなくてはならない。その基礎が新教神学に置いてある。その新教・・・ 森鴎外 「かのように」
出典:青空文庫