・・・ 或るカイタイ会社が北海道のどこかで暗礁にのりあげて三年の間ゆらゆらしていた五千トンの船を二万円で買った。ドックに入れて、四十万かけて底をはりかえた。そして、二十万円に売った。 ドック料が一日五千円ばかりで、ドック側から云えば、なる・・・ 宮本百合子 「くちなし」
・・・このような、わかりきった情ない問題を、その一尖端として水面に露出させるところの見えない水面下の暗礁こそ問題なのである。」「だがわたしは絶望はしない。もしわれわれが本当に人間として基本的なものだけは守り通すという決意をもち、それが実践のために・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・暗かった、シベリアの山奥に新しい炭鉱区を開拓したのは、誰か、大衆のソヴェト権力だ。暗礁だらけのドネープル河を八一〇、〇〇〇馬力の世界最大の発電所と変えたのは誰だ、これもソヴェト同盟のプロレタリアと農民だ! 中国ソヴェト建設のために、射殺・・・ 宮本百合子 「ロシアの過去を物語る革命博物館を観る」
・・・たらしむべき教育は実に難中の難である、ああ、かくして虚栄は人を魔境にさそい堕落の暗礁に誘うローレライである。 人生は混沌。肉の執着といい生命虚栄の執着という、すべて人生を乱す魔道である。数億の人類が数億の眼を白うして睨み合う。睨み合う果・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫