・・・ 七、月評に忠実なる事。 八、半可な通人ぶりや利いた風の贅沢をせざる事。 九、容貌風采共卑しからざる事。 十、精進の志に乏しからざる事。大作をやる気になったり、読み切りそうもない本を買ったりする如き。 十一、妄に遊蕩せざ・・・ 芥川竜之介 「彼の長所十八」
・・・自分の小説が何かに出ると、方々の雑誌屋の店先で小説月評といったような欄をあさって見るが、いつでも失望するにきまっていた。 根津辺の汚い下宿屋で極めて不規則な生活を送っている。一日何もしないで煙草ばかり吹かして寝たり起きたり四畳半に転がっ・・・ 寺田寅彦 「まじょりか皿」
十一月号の『中央公論』に「杉垣」という短篇を書いた。その評の一つとして武田麟太郎氏の月評が『読売新聞』に出ているのを読んだ。「勤め人夫婦が激動する時代の波濤の中でいかに理性的に生くべきかを追究する次第を叙し」「各人物の・・・ 宮本百合子 「現実と文学」
・・・ 昨年十二月号『群像』の月評座談会で、林房雄は、宇野浩二の書いた「文学者御前会議」にふれ、宇野という作家の私小説的作家性をやっつけた。人も知る天皇主義者である林房雄は、宇野浩二というその人なりのリアリストが、その人なりのリアリズムで天皇・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・ ところで、文学的月評は、書く顔ぶれをかえることだけで、ホントに生気ある文化的価値をふき込まれるだろうか? 思うに、それは姑息である。 行きつまったブルジョア文壇の生産力を、新しいプロレタリア文学の作品が圧倒しつつある。従って文・・・ 宮本百合子 「こういう月評が欲しい」
・・・ 今、『東日』の月評をかき終り「地獄のカマのふたがあいた、あいた」と御機嫌のところです。私は短い時間に、沢山の雑誌をよむこと、つまらない小説をよむことがきらいでしかたがないが、とにかくがんばってまとめてうれしい。明日お目にかかりにゆくの・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・『群像』十二月号の創作月評座談会で、林房雄が、深刻ぶり、ということについて語っている気分、ポーズに、はっきりあらわれている。自己陶酔と独善にうるさい覚醒をもとめてやまない近代精神、理性へのよび声そのものが、この種類の作家たちには気にそまない・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
一、芸術批評を本気な仕事とせず、おっつけで、仕来りになったから「月評」と云うものの権威は薄くなったのではありませんか。 二、純粋な動機で批評すれば、或る月には、或る作品について多く書かれ、又、或る月は、沈黙であると云う・・・ 宮本百合子 「純粋な動機なら好い」
八月七日の本紙に、伊藤整氏が同氏の作「幽鬼の町」に就て書いた私の月評に反駁した文章を発表された。編輯者は、私からそれに答える文を求めている。生活及文学に対する私の態度を盲目的な偏執又は非芸術的な機械性と云われている点や錯覚・・・ 宮本百合子 「数言の補足」
・・・を、同志林は『改造』二月号の文芸時評において、同志神近市子は『日日新聞』月評において、それぞれ反駁、批判を発表した。 私は、これらの反駁、批判を注意ぶかく読んで、自身の論文について多くのことを学んだと同時に、それらの反駁、批判それぞれが・・・ 宮本百合子 「前進のために」
出典:青空文庫