・・・ 美術の方面でもウクライナは多勢の優秀なソヴェト木版画家を出している。一九三〇年の春はウィーンその他でウクライナ美術展覧会をやった。 このウクライナ地方が革命までどんな扱いをうけていたかと云えば、大ロシアの支配者たちによって半植民地・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・いつ何処だのかは覚えないが、この書籍館時代の図書館の内部の木版画を観たことがある。羽織袴、多分まだ両刀を挾した男達が、驚くべく顴骨の高い眦の怒った顔で小さく右往左往している処に一つ衝立があり、木の卓子に向って読書している者、板敷の床を二階に・・・ 宮本百合子 「蠹魚」
・・・それで却って木版、ウクライナの木版には非常に面白いものがある。ただしかし非常に面白いのは、そういう風な倶楽部の絵画研究部で作る絵なんかは、技術的には随分下手だけれども、下手な中に如何にも、新生活が始まったばかりのソヴェトの新しい主題が非常に・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・たった一人で、前に木版ずりの粉本を置き、余念ない姿だ。亭のまわりの尾花がくれにそれが見える。 写生の日傘と、東屋との間の道を、百花園と染抜いた袢纏の男が通る。続いて子供づれの夫婦が来かかった。「お父さん、あんなトンネル、おうちに・・・ 宮本百合子 「百花園」
出典:青空文庫