・・・などを、自分なりの理解で熱中してよみ、長い昼休みの時間、そういう本をもって、本校と云われた古い赤煉瓦の建物の、閉ったきり永年開けられることのない大きい扉の外の石段にかけて読むとき、何にたとえん、と云う満足であった。すこし引込んだ庭かげになっ・・・ 宮本百合子 「女の学校」
・・・女高師の方を、私たち附属の生徒は本校と呼んでいた。本校の建物の主な一棟は古風な赤い煉瓦の二階建で、正面大玄関の横の方にはり出した翼の間に、決してその扉は開いたことのない一つの凹んだ小庭があった。雑草が茂っている石段に腰かけると、そこは夏でも・・・ 宮本百合子 「青春」
・・・ 一体、女子高等師範と云う学校は、現在どう改善したか知らないがあの当時は、実に妙な、非人間的な雰囲気を持ったものであった。本校の生徒と云うと、皆、四方八方から体を押さえつけられ、はっと息をつめ、真正面を向いたきり、声も思う存分には出せな・・・ 宮本百合子 「弟子の心」
出典:青空文庫