・・・ 果樹園には、この土地で育ち得るすべての種類の果樹が栽培されていた。 そして、収穫時が来ると、お初穂をどれも一箇ずつ、妙法様と御先祖にお供えした後は、皆売り出すのだから、今からの手入れは決して忽がせにはできない。 雇人や作男など・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・、進んでは大臣になるための政見を発表し、しかも時々バルザックは一八二五年の破局にもこりず熱病にかかったように大仕掛の企業欲にとりつかれ、サルジニアの銀鉱採掘事業や、或る地勢を利用して十万のパイナップル栽培計画を立て、新式製紙術の研究にまで奔・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・ 中央の文壇の関心というものも、ちがった地味での変種の速成栽培への興味めいたものであってはなるまいと思う。ジャーナリズムへ吸収される率でだけ、地方に分散する文学の創造力の意味が計られても悲しいことだと思う。文学の将来性への希望として真面・・・ 宮本百合子 「文学と地方性」
・・・ 綿の栽培が又はやりはじめたことも何となく私たちの女の心をひく事柄である。綿の栽培は明治二十年以来日本では忘られる一方であったそうだ。それが又立ちかえって植られるとすれば、農家の奥からブーンブーンと綿から糸をひく絃の響もきこえて来るよう・・・ 宮本百合子 「昔を今に」
・・・それに伴なって蓮の栽培がどういう影響を受けたかも私は知らない。もし蓮見を希望せられる方があったら、現状を問い合わせてからにしていただきたい。 あの蓮の花の光景がもう見られなくなっているとしたら、実に残念至極のことだと思うが、しかし巨椋池・・・ 和辻哲郎 「巨椋池の蓮」
出典:青空文庫