・・・ ピオニェールはピオニェールで又自分たちの楽隊を持っている。われわれも一日も早く自分たちの音楽によってメーデーのデモをやりたいものだ。〔一九三二年三月〕 宮本百合子 「ソヴェト同盟の音楽サークルの話」
・・・ それから音楽教育――音楽なんかでも、音楽の専門的な発達のための努力とその音楽を一般的に民衆に分からして行くこと、それから民衆自身が何か自分達の楽しみのために、或は集会の時に、示威行列の時に、自分達の楽隊で演奏するために、音楽の研究会という・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・ 初めの間は母に叱られるのを考えて足をムズムズさせながらも我慢して居たが、其等の騒がしい音は丁度楽隊が子供の心を引き付けるより以上の力で病室へ病室へと私の浮足たった霊を誘い寄せるのであった。 私の我慢は負けて仕舞った。 そして到・・・ 宮本百合子 「追憶」
・・・広い桜の生わった野道を、多勢の子供にぞろぞろとあとをつかれながら、赤いトルコ帽に、あさぎの服を着た楽隊を先頭にして、足に高い棒材でつぎ足しをし、顔を白粉や何で可笑しくそめた男が、ジョーカーのような帽子をかぶって、両手をはげしく振り、腰を曲げ・・・ 宮本百合子 「「禰宜様宮田」創作メモ」
・・・郡役所の下へ来た時にはもう、間の抜けた楽隊の音が聞え出し、停車場から荷物を持って来る配達が私の顔をにらんで通った。思わず私は顔を一撫でして女中と顔を見合せて笑った。婆さん連は、端折って居た裾を下した。広い町の両側の店々の飾りを見て歩いた。・・・ 宮本百合子 「農村」
出典:青空文庫