・・・ 警官――横井と彼とは十年程前神田の受験準備の学校で知り合ったのであった。横井はその時分医学専門の入学準備をしていたのだが、その時分下宿へ怪しげな女なぞ引張り込んだりしていたが、それから間もなく警察へ入ったのらしかった。 横井はやは・・・ 葛西善蔵 「子をつれて」
・・・ 昔、横井なに右衛門とかいう下の村のはしっこい爺さんが、始めてここの鉱山を採掘した。それ以来、彼等の祖先は、坑夫になった。――井村は、それをきいていた。子も、孫も、その孫も、幾年代か鉱毒に肉体を侵蝕されてきた。荒っぽい、活気のある男が、・・・ 黒島伝治 「土鼠と落盤」
・・・ 横井礼市。 この人の絵はうるさいところがなくてよい。涼しい感じがある。この人の絵の態度は行きつまらない。どこまでも延びうると思う。 湯浅一郎。 巧拙にかかわらず一人の個人の歌集がおもしろいように個人画家の一代の作品の展覧はいろいろ・・・ 寺田寅彦 「昭和二年の二科会と美術院」
・・・これと反対に恐ろしく綿密で面倒臭そうで、描いている人は存外気楽で、面白くてたまらぬような絵があるとすれば、それは横井弘三氏のである。ルノアルなどは、ちょっと見ると気楽に描いているようだが、また恐ろしく神経を使っているようにも思われるのだが、・・・ 寺田寅彦 「二科会展覧会雑感」
出典:青空文庫