・・・連句は音楽よりも次元的に数等複雑な音楽的構成から成立している。音と音との協和不協和よりも前句と付け句との関係は複雑である。各句にすでに旋律があり和音があり二句のそれらの中に含まれる心像相互間の対位法的関係がある。連歌に始まり俳諧に定まった式・・・ 寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
・・・射的でも玉突きでも同様に二つの物体の描く四次元の「世界線」が互いに切り合うか切り合わぬかが主要な問題である。射的では的が三次元空間に静止しているが野球では的が動いているだけに事がらが複雑である。糊べらで飛んでいる蠅をはたき落とす芸術とこの点・・・ 寺田寅彦 「野球時代」
・・・今もしこの三つの能力が測定の可能な量であると仮定すれば、LSKの三つのものを座標として、三次元の八分一空間を考え、その空間の中の種々の領域に種々の科学者を配当する事ができるであろう。 ヘルムホルツや、ケルヴィンやレイノルズのごときはLS・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
・・・ましてや連句の場合にこの音程に相当する付け味の数は言わば高次元の無限大である。これから見ても連句の世界の広大無辺なことをいくらでも想像することができるであろう。 普通西洋音楽で一つのまとまった曲と称するものにいろいろの形式がある。たとえ・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・読者にしてもし、私の不思議な物語からして、事物と現象の背後に隠れているところの、或る第四次元の世界――景色の裏側の実在性――を仮想し得るとせば、この物語の一切は真実である。だが諸君にして、もしそれを仮想し得ないとするならば、私の現実に経験し・・・ 萩原朔太郎 「猫町」
・・・いることを歴史的・人間的悲劇と腐敗の現実として、しんからつかんでいて、云ってみれば、トルストイ自身が自然発生的な批判とそのリアリズムで描き出した社会的モメントを、一そう明確にして、それにたいしてより高次元のヒューマニティがたたかうべきものと・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・ 現代の平和と原子兵器禁止の要求にあらわされている世界人民の熱望の声々は、より高い次元での人民のルネッサンスの声々である。現代の医学では癌の発生する原因がとりのぞかれず、一分ごとに癌患者が出ている。それだからと云って、癌を人間社会から絶・・・ 宮本百合子 「私の信条」
出典:青空文庫