近藤君は漫画家として有名であった。今は正道を踏んだ日本画家としても有名である。 が、これは偶然ではない。漫画には落想の滑稽な漫画がある。画そのものの滑稽な漫画がある。或は二者を兼ねた漫画がある。近藤君の漫画の多くは、こ・・・ 芥川竜之介 「近藤浩一路氏」
・・・どこまでも真ともに敵を迎える正道の芸でございまする。わたくしはもう二三年致せば、多門はとうてい数馬の上達に及ぶまいとさえ思って居りました。………」「その数馬をなぜ負かしたのじゃ?」「さあ、そこでございまする。わたくしは確かに多門より・・・ 芥川竜之介 「三右衛門の罪」
・・・このような趣向が、果して芸術の正道であるか邪道であるか、それについてはおのずから種々の論議の発生すべきところでありますが、いまはそれに触れず、この不思議な作品の、もう少しさきまで読んでみることに致しましょう。どうしても、この原作者が、目前に・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・彼らは固より不正な人間ではない。正道を踏んで働けるだけ働いたのだ。しかし耶蘇教の神様も存外半間なもので、こういう時にちょっと人を助けてやる事を知らない。そこでもって家賃が滞る――倫敦の家賃は高い――借金ができる、寄宿生の中に熱病が流行る。一・・・ 夏目漱石 「倫敦消息」
・・・ ファシズムが、イデオロギーの面でも、左からまわってやってきているという例は、猪木正道氏、渡辺慧氏などという新型のジャーナリズム流行児の出現にも注目されます。 過去十数年にわたってわたしたち日本の人民は、正しい社会科学の本もよめなか・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ラク町の姐御誰々を正道にたちかえらせる勧善懲悪美談の趣味がある。だがその同じ世間は、すべての女性を売淫からまもる女子の職場確保のためにたたかう組合の活動に冷淡だし、賃上げに反感をもつし、いつまでたっても元ラク町の姐御誰々と、本人を絶望させる・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・この正道さは、今日の現実の中で、いいかげんな民主主義便乗者よりも正義をもつものである。そのひねくれの存在権は、世代的なものとして主張されているのである。 これらは、すべて非常に心理的である。それらが心理的であるということに問題を生じるの・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・父と私との心持の相通じていた程度の濃やかさは御存知ですが、父は自分の死によってまで、かえって私たちに生活力をおこさせ、人生の正道を愛す心を深くさせる、そういう生活を営みました。よく世間では急な永訣のとき、虫が知らせるとか、或る徴候があるとか・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ファブルの伝記者は、アナトール・フランスがファブルの文章は悪文であると云ったということをおこっているが、今日の第三者は、フランスはやはり文学の正道から見ての真実を云ったと思わざるを得ないのである。 科学と文学の交流・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・ 高津正道、佐野学、山川均菊栄氏等もやられたと云う噂あり。実に複雑な世相。一部の人々は皆この際やってしまう方がよいと云う人さえある。社会主義がそれで死ぬものか、むずかしいことだ。だまし打ちにしたのはとにかく非人道な行為としなければなるま・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
出典:青空文庫