・・・当時の外国貿易に従事する者は、もとより市中の富有者でもあり、智識も手腕も有り、従って勢力も有り、又多少の武力――と云ってはおかしいが、子分子方、下人僮僕の手兵ようの者も有って、勢力を実現し得るのであった。それで其等の勢力が愛郷土的な市民に君・・・ 幸田露伴 「雪たたき」
・・・もっと進歩した、もっと合理的な方法でなくては――ただ殺戮、侵略、武力では、国際間の問題は解決しないということを血をもって学んだ。 このたびの大戦の結果は、二十五年以前の第一次世界大戦のときよりも、いっそうまざまざと人間理性の勝利の意味、・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・京漢鉄道総工会の成立大会を武力解散させた軍閥呉佩孚に対して中国労働者がジェネストを起し、英国の労働運動に一つのエポックをつくった。今日三百万の党員をもち中国人口の三五パーセントを解放地区に包括しつつある中共は、一九二三年に第三次党大会をもち・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・正しい平和というのは、ただ国と国との間に武力闘争がないというばかりではなく、それぞれの国の内部で人民の生活権が犯されていないことを条件とする。そして、それぞれの社会生活に人民生活が民主的に発展してゆく可能の道のひらかれている状態を意味するこ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
・・・ しかし戦争にならなければそちらへ行けるでしょうと約束した月曜には、独軍が宣戦の布告もせずに武力に訴えながらベルギーを通過してフランスに侵入した。 パリの母は再び娘たちに書いた。「お互いにしばらくは、通信もできないかも知れません・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・ 平手うちを一つ受けても倒れるようなかよわい少女たちが、武力と脅威に向って、正しいと思うところを主張しとおしたのも、彼女たちが一人でなかったからであった。一人でない力の強さを、おのずからはっきり知って行動したからであった。 ある季節・・・ 宮本百合子 「結集」
・・・帝政ロシアの権力が武力で、絹、皮革の産地チフリース、石油のバクー市を掌握するための近路として拵えたものなのだ。 近東の少数民族の大衆は、灼けつく太陽の熱や半年もつづく長い冬の中で原始的な手工業、地方病と、封建的地主、親方の二重の搾取の下・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・なぜなら、赤軍は労働者農民の武力なのだから。しかし「騎兵隊」を書いたバーベリは同伴者作家団に属する。近頃「第一騎兵隊」を書いて、上演されている作家ウィシニェフスキーは農民作家だろうか、ちがう。「ラップ」の若いコムソモールの出身の作家である。・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ポツダム宣言受諾後、現在日本の政府は、表面上は人民に向って行使すべき武力を失っている。人民に対して行使する表向きの暴力はもっていないという建前になっている。連合国は、日本人民の平和裏の自主性を認めているのである。地方にも都会にも様々の形で各・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
・・・国連憲章は第二条第四項で、領土保全と政治的独立に対して武力をもって脅威することを禁じている。第七項にその国の内政に干渉する権能を国連に与えてはならないという条項が厳存している。わたしたち日本の婦人は、どういう戦争にも日本人民として「使用」さ・・・ 宮本百合子 「世界は求めている、平和を!」
出典:青空文庫