・・・突撃に加わり、一緒に泥をほじり、夜の歩哨にも伴れ立った。司令部とともに、視察した。前線での文学の夕べを組織し、即興芝居への台本を提供した。壁新聞を手伝った。 その演習後文学新聞に赤軍指導者の面白い批判が掲載された。 今度の経験によっ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・舳先に歩哨の銃剣が燭火のように光っている。艀舟の中は静寂で月の光が豊かに濯いでいる。ゴーリキイは、昼間の疲れと景色の美しさに恍惚としつつ思うのであった。「善良な人間になりたい。沢山の人々にとって大切な人間になりたい――。」『タラス・ブーリバ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・しかし歩哨の地点からはとおく去らず、彼は口笛をふいた。交代に間がある――。日曜に踊った女の肩からふいと心の首を持ちあげたとき、番兵は向う側の歩道をゆく二人の女を見た。大股に雪の上を――自分の女の記憶のうえをふみしめるのを瞬間わすれて、番兵は・・・ 宮本百合子 「モスクワ印象記」
出典:青空文庫