・・・国民裁判所へ彼女を行かせるだけだ。民法は、事情によって父親が受ける月給の半額までの扶助料を子供が十八歳になる迄支払う義務を決定している。 万一、男が更に非ソヴェト市民的で、扶助料支払いをいやがり、行衛をくらました時、例えばターニャはどう・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・この台所一つがたとえ民法がどう改正されようとも婦人を解放することのできない現実の封建性となって全日本の婦人の生活にかかっています。婦人代議士がいうように耐乏生活でこの歴史の逆転はくつがえせません。燃料がたっぷりあるように、ガスと電気が使える・・・ 宮本百合子 「今度の選挙と婦人」
・・・半封建的なものとのたたかいが、日本においてどんなに重大であり複雑であるかということは、こんどの憲法一つを見てもわかる。民法が改正されただけで生活感情の伝統の相剋はなくなると思うものはない。日本の財閥が外見上解体されたとして、どうして徒弟制が・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・ 家庭を尊重し、一家における親子の生活に関心を置くわが民法は、妻に対し夫と同居せざるべからずという規定を設けている。然しながら、妻が、泥酔した夫や花柳病にかかっている夫との性的交渉を拒絶すべき母として当然の権利を、擁護してはいないの・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・ 憲法が基本的人権といっている、その人権も勤労と生存のすべての条件が人間らしく守られているときにこそはじめて実際の人間として確立されるものです。民法が改正されて、結婚の自由も、財産に対する権利も、母親の親権も増大しました。しかし文字の上・・・ 宮本百合子 「自覚について」
・・・ 憲法や民法が改正されたについて、この頃はよく家族の問題が出ます。婦人にとっての家族問題――私、女でございますから大変直接なのですが――結婚の問題、親子の関係は、いろいろ複雑な問題を起します。例えば夏目漱石の小説ですが、その主人公は・・・ 宮本百合子 「社会と人間の成長」
・・・青年の賃金の低さは婦人の賃金が騰る時でなければ決して騰らないし、民法の上で女が独立の権利を持たないうちは、一家の中で長男だけが持っている特権と負担とは解決しない。人民の利害はこのようにして、人口の九割九分までを包括している。そしてほんの一握・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・ 民法が改正されようとしている。婦人にとって重大なかかわりをもつ結婚、離婚、親権、財産権などの条項が変更される。親、戸主の権威が不幸の原因とさえなっていた結婚というものは、当事者である男女の互の意志によってとりきめられ、互の協力によって・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・ジーを、王と貴族と僧侶の支配にたいして、主張したのでしたが、この日本のブルジョアジーの特質は、はじめから、革命力を失った階級としてあらわれ、したがって彼らの力で、憲法だって民主憲法はつくれなかったし、民法にしろ、民主的な民法はこしらえられま・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・ 日本が今やっと民法における婦人の地位の改良に着手した。日本が近代資本主義の国として出発したとき、既に改正されるべきはずであった資本主義社会の枠内での婦人の人権が、今日ようやく認められて来た。そのくいちがいの大きさ。即ち、明治からの七十・・・ 宮本百合子 「貞操について」
出典:青空文庫