・・・私の外曾祖父は前にもいう通り、『美少年録』でも『侠客伝』でも皆謄写した気根の強い筆豆の人であったから、『八犬伝』もまた初めは写したに相違ないが、前数作よりも一層感嘆措かなかったので四、五輯頃から刊本で揃えて置く気になったのであろう。それから・・・ 内田魯庵 「八犬伝談余」
・・・また○○の木というのは、気根を出す榕樹に連想を持っていた。それにしてもどうしてあんな夢を見たんだろう。しかし催情的な感じはなかった。と行一は思った。 実験を早く切り上げて午後行一は貸家を捜した。こんなことも、気質の明るい彼には心の鬱した・・・ 梶井基次郎 「雪後」
・・・僕も桂の家でこれを実見したが今でもその気根のおおいなるに驚いている。正作はたしかにこの祖父の血を受けたに違いない。もしくはこの祖父の感化を受けただろうと思う。 途上種々の話で吾々二人は夕暮に帰宅し、その後僕は毎日のように桂に遇って互いに・・・ 国木田独歩 「非凡なる凡人」
出典:青空文庫