・・・ 娘たちに求愛し、その好みにそわんとするだけでは時代の青年の質は低下し、娘たちの好みもまた向上しないであろう。 六 恋愛以上の高所 恋愛が青春にとって如何に重要な、心ひかれるテーマであるからといって、人生において・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・私たちは求愛の表情の外に現われているようなポーズはもとよりとらない。がそれかといって、冷くすましていられるのもとりつくしまがない。求める心を内に抱いて、外はいくらか結晶性なのが――という意味は化合するまでには溶解することを要するという意味な・・・ 倉田百三 「人生における離合について」
・・・その男の求愛をしりぞけたのは、思想のためでもその男に死なされた夫への愛のためでもなかった。「あたくし、ぜいたくに生れついているのよ。それも広瀬が金の力でゆるしてくれるような出来合いのぜいたくじゃなくって、みんなの人がこれがいいって言ってくれ・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・身ぶり沢山で、而も婿の生計を支えてやらなくてはならぬ愚痴を並べ、借金の話、娘の持参金についての利子勘定のまくし立てるような計算と全く渾然結合して、道楽な良人のために悲運にある貞潔なユロ男爵夫人に厚顔な求愛をする。 ユロ男爵夫人の目下の全・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
出典:青空文庫