・・・はて法会の建札にしては妙な所に立っているなと不審には思ったのでございますが、何分文字が読めませんので、そのまま通りすぎようと致しました時、折よく向うから偏衫を着た法師が一人、通りかかったものでございますから、頼んで読んで貰いますと、何しろ『・・・ 芥川竜之介 「竜」
・・・ 阿部一族は評議の末、このたび先代一週忌の法会のために下向して、まだ逗留している天祐和尚にすがることにした。市太夫は和尚の旅館に往って一部始終を話して、権兵衛に対する上の処置を軽減してもらうように頼んだ。和尚はつくづく聞いて言った。承れ・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・ 大野の想像には、小倉で戦死者のために法会をした時の事が浮ぶ。本願寺の御連枝が来られたので、式場の天幕の周囲には、老若男女がぎしぎしと詰め掛けていた。大野が来賓席の椅子に掛けていると、段々見物人が押して来て、大野の膝の間の処へ、島田に結・・・ 森鴎外 「独身」
・・・ついで伊予の国に行って、法会にこと寄せて二十歳以上の人々を集め、同じく子を鷲にとられた者を調べたが、ここでもわからなかった。そこで玉王はいら立って、老年のために出頭しない者があるならば、引き出物をしても連れて来いと命じた。そのとき、四か国の・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫