・・・ もし出来るならば、多数の歌人が銘々に口調のいいと思う歌を百首くらいずつも選んで、それらの材料を一纏めにして統計的に前述の波数や波長の分配を調べてみたら何かしら多少ものになるような結果が得られはしないかと考えるのである。 このような・・・ 寺田寅彦 「歌の口調」
・・・尤も電波とは云ってもそれは今のラジオのような波長の長い電波ではなくて、ずっと波長の短い光波を使った烽火の一種であるからそれだけならばあえて珍しくない、と云えば云われるかもしれないが、しかしその通信の方法は全く掛け値なしに巧妙なものといわなけ・・・ 寺田寅彦 「変った話」
・・・ 和名鈔には「顱 和名加之良乃加波長 脳蓋也」とあるそうで「カハラ」は頭の事である。ギリシアやマレイとほとんど同一である。 アラビアの頭骨 qahfun は「カフフ」で「かうべ」に近い。 英語の円頂閣 cupola はラテンの ・・・ 寺田寅彦 「言葉の不思議」
・・・蛇行の波長が河床の幅に対して長いような場合に特にこれが問題になるであろう。これは地形学者の再検討をわずらわしたい問題である。 以上述べたものの多くは、言わば「並行縞」と呼ばれるべき形態のものであったが、このほかになお「放射縞」と言わるべ・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・しかるに〇・五ミクロンはもはや黄色光波の波長と同程度で、網膜の細胞構造の微細度いかんを問わずともはなはだ困難であることが推定される。 視覚によらないとすると嗅覚が問題になるのであるが、従来の研究では鳥の嗅覚ははなはだ鈍いものとされている・・・ 寺田寅彦 「とんびと油揚」
・・・また機会があったら水の底にできているこの波形の波長を計ってごらんなさい。通例、深い所ほど波長が短くなっているでしょう。 波頭が砂浜をはい上がって引いたすぐあとの湿った細砂の表面を足で踏むと、その周囲二三尺ほどの所が急にすうとかわくが、そ・・・ 寺田寅彦 「夏の小半日」
・・・これはたぶんあとの母音は振動数の多い上音に富むため、またそういう上音はその波長の短いために吸収分散が多く結局全体としての反響の度が弱くなるからではないかと考えてみた事がある。ともかくもこの事と、鸚鵡石で鉦や鈴や調子の高い笛の音の反響・・・ 寺田寅彦 「化け物の進化」
・・・そしてその物から来る光の波長が一ミリの二千分の一ないし三千分の一ぐらいの範囲内にあるのでなければもはや網膜に光の感じを起こさせる事ができない。波長がこの範囲にあってもその運ぶエネルギーが一定の限度以上でなければ感じる事ができない。なおやっか・・・ 寺田寅彦 「物理学と感覚」
・・・もしもそうでなかったらたとえ一メートルの標準尺度をカドミウム線の波長と比較しようとしても光の波長自身がどうして頼みになるであろう。 測定という事が可能であり、測定した量の間に幾分でも普遍な関係が見出され簡単な言葉で方則が述べ得られるのは・・・ 寺田寅彦 「方則について」
・・・これが実現した暁には北西の空からあらゆる波長の電磁波の怒濤が澎湃としてわが国土に襲来するであろう。 思想などというものは物質的には夢のようなものである。半世紀たたないうちに消えてしまわなければ変化してしまう。日本には昔からずいぶんいろい・・・ 寺田寅彦 「北氷洋の氷の割れる音」
出典:青空文庫