・・・貴司山治氏の戯曲「洋学年代記」には、学者としての良心と達識とのために国法にふれた幕末蘭学者の一群と間宮林蔵の運命とが扱われた。村山知義氏は「或るコロニーの歴史」に朝鮮人の生活を描き又「獣神」にこの作者独特のエネルギーと不思議な内部の分裂矛盾・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・風の文句に、仰々しく一々何々論何々論、と四角い字を並べ、肩を張って読んだ人々の心持を考えると、漫に洋学が公然日本に入りかけた時代の、白熱した一般の読書慾、知識慾を思いやられる。 彼等は、書いてあることが下らなかろうが、支那人向きであろう・・・ 宮本百合子 「蠹魚」
・・・という論文の一部が、文学の本質、ジャンル等についての西洋学説が日本に紹介された最初のものであったということを本間久雄氏著「男女文学史」で知ったことも感興をひいた。明治七年と云えば福沢諭吉は四十一歳、「学問のすゝめ」を出した二年後であり、祖父・・・ 宮本百合子 「繻珍のズボン」
・・・この本に沿って、三笠書房の歴史全書中の「洋学論」が読まれたなら、著者が一つの情熱をもって、祖先たちが世界の真理の到達点を、わが封建の日本へ新しい力として齎そうとした努力の価値を語っていることを知ることが出来る。東洋経済新報社出版の「現代日本・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
出典:青空文庫