・・・そして、児童の読物に於ては、誤れる現実の喜悲を清算して、真にこれを感じて尊重しなければならぬ人類の名誉、幸福のいかなるものであるかについて、知らしめ、意識せしめ、それに向って鼓舞せしめなければならぬものです。同時に、正純な美について、愛につ・・・ 小川未明 「童話を書く時の心」
・・・ 西洋へ行く前にどうしても徹底的にわるい歯の清算をしておく必要があるのでおおよそ半月ほど毎日○○病院に通った。継ぎ歯、金冠、ブリッジなどといったような数々の工事にはずいぶんめんどうな手数がかかった。抜歯も何本か必要であったが、昔とちがっ・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・科学という霊妙な有機体は自分に不用なものを自然に清算し排泄して、ただ有用なるもののみを摂取し消化する能力をもっているからである。しかしもしも万一これら質的研究の十中の一から生まれうべき健全なるものの萌芽が以上に仮想したような学風のあらしに吹・・・ 寺田寅彦 「量的と質的と統計的と」
・・・という国内戦時代のコムソモールたちの感情、若さから誤謬は犯しながら雄々しく実践でそれを清算する働きぶりなどを歴史的に見た劇を上演している。ハバロフスクへ潜行運動にベザイスが、絵を描いた貨車にのっかって行く。その中途から頼まれてのせてやった娘・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・はカターエフの誤謬を清算している。さすがは職業組合によって直接管理されている劇場だけある。「憤怒」においては「前衛」に描写されているようないわゆる主人公はない。村の女教師がいる。貧しい女小作人がいる。その女の小さい息子がいる。党員の村ソ・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・ 折角そういう位置にありながら、専門作家が清算しようと努力している欠点から発足するというようなことがあっていいものか! 現在、ソヴェト同盟の全社会生活は、生産経済計画が根柢となって動いている。文学だけが、それについて無関係だなどとい・・・ 宮本百合子 「「鎌と鎚」工場の文学研究会」
・・・そして、千八百万人の文盲を清算しつつある。既に一九二八年には百三十六万五千余人が、完全に文盲をすてた。――都会人口の九三パーセント、農村人口の七九・四パーセントが過去の知的暗黒を追っぱらいつつあるのだ。――サア、本を! 新聞を!・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・「あのくらいの大物で、あんなに何も彼も清算するのは近来ないそうだ、びっくりしていたよ」「…………」 六十日以上風呂にも入れず、むけて来る足の皮をチリ紙の上へ落しながら、悠然とかまえてることさと云う時、その主任の云ったことを焙るよ・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・弁証法的方法のスローガンなんぞは全く誤謬であった、したがって、プロレタリア文学の階級性の主張も誤っていたのだ、という考え方はプロレタリア文学運動のそれぞれの段階を、全体的な発展の上に見ることのできない清算主義的な態度であるし、またプロレタリ・・・ 宮本百合子 「社会主義リアリズムの問題について」
・・・を催し、そこの婦人記者となった長谷川寿子は、自身の略歴を前書にして「遂に過去の一切の共産思想という運動を清算し」大谷尊由に対談して、長谷川「歎異鈔なんか拝読いたしますと『善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人をや』と書いてありますから、吾々共・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
出典:青空文庫