・・・ はなはだまとまらないこの一編の映画漫筆フィルムにこのへんでひとまず鋏を入れることとする。 寺田寅彦 「映画時代」
・・・ コーヒー漫筆がついついコーヒー哲学序説のようなものになってしまった。これも今しがた飲んだ一杯のコーヒーの酔いの効果であるかもしれない。 寺田寅彦 「コーヒー哲学序説」
・・・このはなはだ杜撰な空想的色彩の濃厚な漫筆が読者の中の元気で自由で有為な若い自然研究者になんらかの新題目を示唆することができれば大幸である。ただ記述があまりに簡略に過ぎてわかりにくい点が多いことと思われるが、そういう点についてはどうか聡明なる・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・大田南畝が壮時劉龍門に従って詩を学んだことも、既にわたくしは葷斎漫筆なる鄙稿の中に記述した。 南郭龍門の二家は不忍池の文字の雅馴ならざるを嫌って其作中には之を篠池と書している。星巌及び其社中の詩人は蓮塘と書し又杭州の西湖に擬して小西湖と・・・ 永井荷風 「上野」
・・・子の著『猿論語』、『酒行脚』、『裏店列伝』、『烏牙庵漫筆』、皆酔中に筆を駆ったものである。 わたしは子の遺稿を再読して世にこれを紹介する機会のあらんことを望んでいる。大正十二年七月稿・・・ 永井荷風 「梅雨晴」
これから書こうとするのは、筋も何もない漫筆だ。今日など、東京へ帰って見ると、なかなか暑い。いろいろ気むずかしいことなど書きたくない。それゆえ、これを読んで下さるかもしれぬ数多い方々の中に、私の親しい友達の一人二人を数えこみ・・・ 宮本百合子 「この夏」
出典:青空文庫