・・・『戦旗』が一九二九年ごろ、片岡鉄兵の「アジ太・プロ吉世界漫遊記」をのせて大好評であった。一九三一年に「ナップ」は、数人の作家に課題小説をわりあてた。農民小説は誰、労働者小説は誰、という風に。そして、作者はソヴェト同盟の生活をどっさり紹介・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・戦時中彼はヨーロッパ漫遊をしてナチスと兄弟となっていた日本権力の活躍ぶりを視察して、本も著している。鈴木文史朗の暴言に答えて「そんなことはできない」と答えたときのパロット氏の表情が見たかった。鈴木文史朗という新聞記者だったものがアメリカまで・・・ 宮本百合子 「鬼畜の言葉」
・・・一九二九年以後ヨーロッパ、特にフランスの事情は一変して、漫遊客の数は今日劇減している、思えば我が一家は、世界事情が将に一転化しようとするその前夜、未だ夥しくヴルヴァールを彷徨していたアメリカ人の間に計らずも互していたのであった。・・・ 宮本百合子 「中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註」
・・・円本時代に頻出した作家たちの海外漫遊は、ある一部の日本の作家達の経済的向上を語ったと同時に、微妙な独特性でその後におけるそれらの作家達の社会的動向に影響を及ぼした。 一九二九年以来、世界の事情は急変した。久米正雄氏が嘗て美しい夫人を伴っ・・・ 宮本百合子 「「迷いの末は」」
出典:青空文庫