・・・ 私は、実の自己と云うものは、一個の肉体に宿る多くの意志、感情、智の中で、生れ出た時既に宇宙の宏大無辺の精力の中から分けられた精力が、その三つの中のいずれかに宿って居る時に、その先天的にある精力を自己と云いたい。 そう云えば、世の人・・・ 宮本百合子 「大いなるもの」
・・・ けれども、却って、偉い人格という、漠然と心に出来ていた型はくずれて、無辺在な光明の微分子のうちに溶けこんでしまうのを感じたのである。 無辺在な光明……。 ほんとに彼女は、もう「偉い人というものは」などという言葉で考えたり探した・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・ 永遠な、過去と未来とを縦に貫く一線は、又、無辺在な左右を縫う他の一線と、此の小さい無力な私の上に確然と交叉して居るのを感じずには居られないのである。 斯うやって考えて来ると、私は、今日の生活が、如何に「智」に不足して居るかを思わず・・・ 宮本百合子 「無題」
出典:青空文庫