・・・ですから杜子春は無残にも、剣に胸を貫かれるやら、焔に顔を焼かれるやら、舌を抜かれるやら、皮を剥がれるやら、鉄の杵に撞かれるやら、油の鍋に煮られるやら、毒蛇に脳味噌を吸われるやら、熊鷹に眼を食われるやら、――その苦しみを数え立てていては、到底・・・ 芥川竜之介 「杜子春」
・・・それにも関わらず掘出し物根性の者が多く、蚤取り眼、熊鷹目で、内心大掘出しをしたがっている。人が少し悪い代りに虫が大に好い談である。そういう人間が多いから商売が険悪になって、西の方で出来たイカサマ物を東の方の田舎へ埋めて置いて、掘出し党に好い・・・ 幸田露伴 「骨董」
・・・眉の間に深い皺をよせ、血眼になって行手を見つめて駆けっているさまは餓えた熊鷹が小雀を追うようだと黒田が評した事がある。休日などにはよく縁側の日向で赤ん坊をすかしている。上衣を脱いでシャツばかりの胸に子供をシッカリ抱いて、おかしな声を出しなが・・・ 寺田寅彦 「イタリア人」
・・・一方のすみには熊鷹のような悪漢フレッドの一群が陣取って何げないふうを装って油断なくにらまえている。ここで第三者たる観客はまさに起こらんとする活劇の不安なしかも好奇な期待に緊張しながら、交互にあちらを見たりこちらを見たりして、そうして自分も劇・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
出典:青空文庫