・・・ けさ、お盆の特配で、ビイルが二本配給になったの。ひやして置きましたけど、お飲みになりますか?」 夫はおどおどして気弱く笑い、「そいつは、凄いね。」 と声さえかすれて、「お母さんと一本ずつ飲みましょうか。」 見え透いた、・・・ 太宰治 「おさん」
・・・それじゃ、いろいろ特配をもらったろう。こないだ罹災者に毛布の配給があったようだが、俺にくれ」 私はまごついた。彼の真意を解するに苦しんだ。しかし、彼は、まんざら冗談でも無いらしく、しつこくそれを言う。「くれよ。俺は、ジャンパーを作る・・・ 太宰治 「親友交歓」
・・・ 仮に、そういう切迫した事態に立ち至ったとき、或る区に食糧管理委員会が出来て、板橋でやったように、どこかに隠匿されている食糧を発見し、ああいう風に特配したとする。その場合、警視庁は、その方法を適当と認めていないのであるから、何かの形で取・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
出典:青空文庫