・・・私は私の意志からでない同様の犯行を何人もの心に加えることに言いようもない憂鬱を感じながら、玄関に私を待っていた友達と一緒になるために急いだ。その夜私は私達がそれからいつも歩いて出ることにしていた銀座へは行かないで一人家へ歩いて帰った。私の予・・・ 梶井基次郎 「器楽的幻覚」
・・・たとえばド・ヴァレーズ伯爵がけしからぬ犯行の現場から下着のままで街頭に飛び出し、おりから通りかかったマラソン競走の中に紛れ込み、店先の値段札を胸におっつけて選手の番号に擬するような、卑猥であくどい茶番はヤンキー王国の顧客にはぜひとも必要なも・・・ 寺田寅彦 「音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」」
・・・その殺人現場における事件の推移はもちろん、その動機から犯行までの道行きをたとえ簡単にでも正確につきとめるためには、実は多数の警察官や司法官の長日月の精査を要し、しかもそれでもなかなか容易にはすみからすみまで明白にしにくいのが通例である。それ・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
・・・最初は犯行そのものを否認しつづけ、同月二十日に至り平山検事に単独犯行を自供した。それが九月十三日になって、神崎検事に対してこんどは自分一人ではないと共同正犯を主張した。そして相川検事にもこれを述べ、さらに十一月二日には自由法曹団の弁護人をこ・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
出典:青空文庫