・・・白梅の花を見て色のないのを責めるような種類の云わば消極的な抗議が、時と場合によっては幅を利かして審査の標準を狂わせるようなことも全くないとは云われない。審査員というものが神様でない以上これも止むを得ないことである。ましてや論文が独創的なもの・・・ 寺田寅彦 「学位について」
・・・すべての仕掛けはこの車の同時調節によって有効になるので、試みにわざとちょっとばかりこの調節を狂わせると、もう受信機の印刷する文句はまるきり訳の分からぬ寝言にもならない活字の行列になってしまうのである。 この二十世紀の巧妙な有線電信機の生・・・ 寺田寅彦 「変った話」
・・・音頭取が一つ拍子を狂わせるとたちまち怪我人が出来るそうである。 映画の立廻りの代りにこの「花取り」を入れて一層象徴化されたる剣の舞を見せたらどうかと思うのである。その方がまだしも「芸術的な退屈」さである。・・・ 寺田寅彦 「雑記帳より(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ けれ共ごく稀には、自分の日常生活の習慣に支配された様な形になって、純にその人の精神なり何なりに接せずには居られないと云う感じより、読まなくちゃあならないと云う謂わば一日中の手順を狂わせる心持悪さから一枚なり一枚なり読む事がある。 ・・・ 宮本百合子 「無題(四)」
出典:青空文庫