・・・ 大人も、友達も、皆のんきに笑い、喋り、追いかけっこをして遊んでいるのに、たった独りぼっちの自分は、なぜこんなに淋しく、こんなにも悲しい目に会わなければならないのだろう……。 仕合わせや、楽しさは、皆、皆もうあの女王様や王様と一緒に・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・とすぐ又独りぼっち置いて行ってしまった。私は暫く眠られないで怖わい思いをした。 けれ共いつの間にか子供の正体ない眠に落ちて、翌朝一人でに目をさまして見ると、昨夜の事は嘘の様に静まり返った家中は水を打った様であった。 女中の話・・・ 宮本百合子 「追憶」
・・・ ストーブの暖い、上の水皿から湯気のぼうぼう立つまわりに、大勢成人や自分くらいの人々がい、独りぼっちで入って来た自分を驚いたように見る。――自分が試験されるのだから、母などは、ついて来るものとも思っていなかったのである。が、この光景を見・・・ 宮本百合子 「入学試験前後」
・・・ 今までは自分の後にあって、目に見えぬ支えとなっていてくれた何か、何かの力が、もうすっかり自分を見捨てて独りぼっち取りのこしたまま、先へ先へと流れて行ってしまうような心持がする。 何も彼にもが過ぎて行く……。 グングン、グングン・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・なんかと云って又仲良くしてもらうんなんかって事はしたくない人間なんだから…… 独りぼっちにされたって、やっぱり何ともない様なかえって愉快そうな笑いがおをして暮す人間なんだから、私は友達なんかなくったっていいんだ、本さえあれば。友達に、し・・・ 宮本百合子 「芽生」
出典:青空文庫