・・・ 大衆というものを、文化においても創造的能力より消費的面において見る、つまり『キング』と浪花節と講談、猥談をこのむものとしてだけ見て、しかもそういう大衆の中には種々な社会層の相異があり、その相異から生じる利害の相異もまたあるという現実を・・・ 宮本百合子 「今日の文学に求められているヒューマニズム」
・・・きょう一部の婦人雑誌が何かのマニアにとりつかれてでもいるように恋愛と性にはまりこんでいて、わたしたちにほしい科学的な性の知識や人生の設計としての愛情の問題からは遠くずれおちた絵そらごとやきたならしい猥談で、少女たちの好奇心までを餌じきにして・・・ 宮本百合子 「人間イヴの誕生」
・・・現代の恋愛論が、多分の猥談的要素に浸潤されていること、両者の区別が極めて曖昧になっているところ。そこでは男も女も卑屈にさせられている。日本的事情というものが斯くの如くにして表われているところに、私は、或る憤りを感じるのである。 杉山平助・・・ 宮本百合子 「もう少しの親切を」
出典:青空文庫