・・・本当に、唯物弁証主義的手法――プロレタリア・リアリズムを獲得するために、芸術は、どこまでも生産の場所になければならない、と。 五箇年計画による生産手段の変化がドシドシ大衆の社会的心理を変えてゆくその社会的心理を把握するために、作家は生産・・・ 宮本百合子 「「鎌と鎚」工場の文学研究会」
・・・を求めた闘いを題材とするこの全く新しい版画集に、賞を与える決議を却下した。 一九〇八年に発表した版画の連作「農民戦争」で、ケーテ・コルヴィッツは「ヴィラ・ロマナ賞」を獲得した。一年間フローレンスのヴィラ・ロマナに無料で滞在することのでき・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・翌六年満州事変が始ってから、あらゆる婦人参政権獲得に関する運動は、軍事目的のために圧倒され、婦選案などは議会にとり上げられさえもしなくなって来た。その頃から、本年八月迄、十四年の間、日本の婦人運動は辛うじて母子保護法を通過させたのみで、炭鉱・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・ 自分は茲では文学的表示としての新しき感覚活動が、文化形式との関係に於ていかに原則的な必然的関連を獲得し、いかに運命的剰余となって新しく文学を価置づけるべきかと云うことについて論じ、併せてそれが個性原理としてどうして世界観念へ同等化し、・・・ 横光利一 「新感覚論」
・・・私はただ自分のやり方で、自分の内生に、あの集中と純一とを獲得するほかはない。そのためには私のすべての戦いを終局まで戦わなくてはならぬ。勝利を得るまでの分裂した生活の惨めさは、目下の自分の力ではいかんともし難い。 私は一つのことを悟り得た・・・ 和辻哲郎 「生きること作ること」
・・・この視点から見て、千年以前の我々の祖先の文化がいかに心理的な深さを獲得するかは、きわめて興味ある問題である。その成功を伴なった華やかな方面においても、また腐敗を伴なった暗黒な方面においても。―― これは確かに一つの視点である。それによっ・・・ 和辻哲郎 「偶像崇拝の心理」
・・・ 感受性が鋭く、内生が豊富で、象徴を解する強い直覚力を豊かに獲得しているものはさまざまな対象の生命の動きを自己の内に深く感じ得るだろう。彼らは外に現われたさまざまな現象を見るのみならず、その内部の生命に力強く没入し行く。彼らの感ずるのは・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
・・・まず生かしてみないでほんとうの生を獲得させようというのは、もともと無理なのです。そんな型にはめるような鍛練は、害こそあれ益はありません。今の青年教育は大概この弊に陥っています。ただ、性格のしっかりした青年は、反抗心によってこの教育の害悪から・・・ 和辻哲郎 「すべての芽を培え」
・・・ ここでばかばかしく無意義に見えた現戦争が、文化史的に非常に重大な意義を獲得する事になる。すなわち文芸復興期以後二十世紀まで続いて来た自然科学と国家組織との発達が、その極点に達して破裂してしまうのである。そうして旧来の自然科学的文化の代・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
・・・彼女の意志を強め、彼女に自信を獲得させることが、やがて彼女を救うことになるだろう。より強い力を内より湧き出させるのが、自欺を破ってやる最良の方法であるのだから。こうして私は彼女を優しくいたわることができた。――一時間たった。私はいつのまにか・・・ 和辻哲郎 「転向」
出典:青空文庫