・・・「文化の宝船に、文芸の珠玉を載せて、順風に金襴の帆を孕ませて行く。それが文芸懇話会の使命でありたい。楫をとるもの、艪を操るものには元より個々の力の働きがあるであろう。しかし進み行くべき針路は定っている」太陽をめぐる天体の運行が形容の例にとら・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 明治二十年代の日本のロマンティシズムの流れの中からは、藤村、露伴をはじめいろいろの作家が生れたわけだけれども、樋口一葉は、その二十五年の生涯が短かっただけに、丁度この時代のロマンティシズムが凝って珠玉となったような「たけくらべ」を代表作・・・ 宮本百合子 「人生の風情」
・・・これが、ロダンの芸術を益々ふかく理解させるばかりか、後進のものに彫刻のみならず、芸術というものの本質をわからせるに役立ち、文学や音楽の仕事にたずさわるものをも魅する珠玉に輝いているのは何故だろう。ロダンはそこで、自分の苦心努力ぶりを語っては・・・ 宮本百合子 「「青眉抄」について」
・・・という一つの珠玉が生れた。作品でない日記をよむと、一葉が生活と苦闘して、女が社会からうけている扱い、又女同士の間、文学の仲間たちにさえある貧富の懸隔とその心理などについてどんなに鋭く感じ、疑い、悩んでいるかがよくわかる。しかし、当時の彼女の・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・肉は袋であり霊は珠玉である。袋が水に投げらるる時は珠もともに沈まねばならぬ。されど袋が土に汚れ岩に破らるるとも珠玉は依然として輝く、この光が尊いのである。珠を九仞の深きに投げ棄ててもただ皮相の袋の安き地にあらん事を願う衆人の心は無智のきわみ・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫