・・・しかしそういう目標に名前がつけられ、その名前がいよいよ固定してしまい、生き残りうるためには特別な条件が具足することが必要であると思われる。単に理屈がうまいとか、口調がいいとかいうだけでは決して長い時の試練に堪えないかと思われる。従来の地名の・・・ 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・災難を予知したり、あるいはいつ災難が来てもいいように防備のできているような種類の人間だけが災難を生き残り、そういう「ノア」の子孫だけが繁殖すれば知恵の動物としての人間の品質はいやでもだんだん高まって行く一方であろう。こういう意味で災難は優良・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・翌朝あけて見るときのう買ったのと、前からいた生き残りのうちの一尾とが死んでいた。 死因がわからない。しかしたぶんこうではないかと思われた。夏じゅうは昼間に暖まった甕の水が夜間の放熱で表面から冷え、冷えた水は重くなって沈むのでいわゆる対流・・・ 寺田寅彦 「藤棚の陰から」
・・・海から騰る泡で太陽を消せ、生き残りの象から虫けらのはてまで灰を吸わせろ、えい、畜生ども、何をぐずぐずしてるんだ。」ラクシャンの若い第四子が微笑って兄をなだめ出す。「大兄さん、あんまり憤らないで下さいよ。イーハトブさんが向うの空で・・・ 宮沢賢治 「楢ノ木大学士の野宿」
出典:青空文庫