・・・先祖以来、田螺を突つくに練えた口も、さて、がっくりと参ったわ。お庇で舌の根が弛んだ。癪だがよ、振放して素飛ばいたまでの事だ。な、それが源で、人間が何をしょうと、かをしょうと、さっぱり俺が知った事ではあるまい。二の烏 道理かな、説法かな。・・・ 泉鏡花 「紅玉」
・・・「隠元豆、田螺さあね。」「分らない。」「あれ、ははは、いんきん、たむしだてば。」「乱暴だなあ。」「この山代の湯ぐらいでは埒あかねえさ。脚気山中、かさ粟津の湯へ、七日湯治をしねえ事には半月十日寝られねえで、身体中掻毟って、・・・ 泉鏡花 「みさごの鮨」
・・・なるほど這って行く様子はいかにも田螺かあるいは寄居虫に似ている。それからまた「避債虫」という字もある。これもなかなか面白いと思った。それから手近な動物の事をかいた書物を捜したが、この虫の成虫であるべき蝶蛾がどんなものであるか分らなかった。英・・・ 寺田寅彦 「小さな出来事」
・・・ゴゴンゴー、 田螺はのろのろ。 うう、田螺はのろのろ。 田螺のしゃっぽは、 羅紗の上等、ゴゴンゴーゴー」 本線のシグナルはせっかちでしたから、シグナレスの返事のないのに、まるであわててしまいました。「シグナレ・・・ 宮沢賢治 「シグナルとシグナレス」
出典:青空文庫