・・・そして実はその倫理的な問いたるや、すでに青年の胸を悩まし、圧しつけ、迷わしめているところの、活ける人生の実践的疑団でなくてはならないのだ。 かくてこそ倫理学の書をひもどくや、自分の悩んでいる諸問題がそこに取り扱われ、解決を見出さんとして・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・それでは彼の胸裡の疑団とはどんなものであったか。 第一には何故正しく、名分あるものが落魄して、不義にして、名正しからざるものが栄えて権をとるかということであった。 日蓮の立ち上った動機を考えるものが忘れてならないのは承久の変であ・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・の提出された仕事が問題の各方面を引っくるめた全体の上から見ると実に些末な価値しかないものと他の多くの人からは思われるものであっても、それが丁度、当該審査委員の正に求めている壷にはまり、その委員の刻下の疑団を氷解せしめるような要点に触れている・・・ 寺田寅彦 「学位について」
出典:青空文庫