・・・という題の失恋小説を連載する事になって、その原稿発送やら、電報の打合せやらで、いっそう郵便局へ行く度数が頻繁になった。 れいの無筆の親と知合いになったのは、その郵便局のベンチに於いてである。 郵便局は、いつもなかなか混んでいる。私は・・・ 太宰治 「親という二字」
・・・一九三六年のダイジェストの調査は調査ごとに五〇万ドルの費用をかけ一千万枚のアンケートを発送し、二、一五八、七八九の回答にもとづいて行われた。この大仕掛のダイジェスト世論調査が、何故にとりかえしのつかない大失敗に終ったかというと、そこには実に・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・そして趣意書を印刷し、それを発送する仕事がはじまった。創立大会を準備する仕事がはじまった。同時に、敗戦後第一回の選挙がせまって、日本の婦人たちがはじめて政治上に意志をあらわす機会もきた。この事情は、はじめぼんやりとした日本の社会と婦人の生活・・・ 宮本百合子 「その人の四年間」
・・・壺井栄さんは、『戦旗』の発行や発送のためには大きい見えない力として扶けた人だった。良人や息子を獄中に送った女の人々のよい相談あいてであるばかりでなく励ましてであった。子供のうちから体で働いて生きながら、そのような人生の中に美しいもの、愛くる・・・ 宮本百合子 「壺井栄作品集『暦』解説」
・・・階下が発送部で、階上が編輯室だ。誰かが少し無遠慮に階段を下りると、室じゅうが震えるその二階の一つの机、一台のタイプライターを、ジェルテルスキーは全力をつくして手に入れたのであった。 薄曇りの午後、強い風が吹くごとに煙幕のような砂塵が往来・・・ 宮本百合子 「街」
・・・ 小生はこの考えが老父の了解を得ることを信じて右の手紙を発送した。 これが一つの私事の顛末である。 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫