・・・その「ぱッと顔の赤らむ直截な感情である」羞恥とはなんであろうか、ということをこの作者は生々しい感情から扱いえなくて中村光夫さんはこういうふうに論じている、誰それは、というふうに、と羞恥論をやっています。羞恥という言葉は、この作品のなかにどっ・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・それが面白いことに、革命当時はプロレタリアートの叫び、それから解放されたプロレタリアートの喜び、悲しみ、そういうものを直截に、そのまま発表しようとする、そういう傾向が強かった。 それが建設十何年という時になって来ると、いろいろ落付きが出・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・バルザックの死に際して一八五〇年の彼の書いた追悼の文章の調子は我々の心にそのことを直截に印象づけるのである。同時代の作家たちは、次第にバルザックの文学業績の規模の大さ、主題の独特性は感じつつも、彼の時代おくれな正統王党派ぶり、貴族好み、趣味・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・われわれプロレタリア作家の生活慾はもっと直截であり熱烈である。革命的作家、文化の闘士として直に勤労大衆のうちにまじり、闘争をともにその中にあって闘争して、大衆の豊富な革命的経験を自身の創造力として摂取するとともに大衆を自身の経験の価値に目ざ・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・此のため官能的表徴は感覚的表徴よりもより直截で鮮明な印象を実感さす。が、実は感覚的表徴のそれのごとく象徴せられた複合的綜合的統一体なる表徴能力を所有することは不可能なことである。此の故官能表徴は表象能力として直接的であるそれだけ単純で、感覚・・・ 横光利一 「新感覚論」
・・・ この北条早雲の名において、『早雲寺殿二十一条』という掟書が残っているが、これはその内容の直截簡明な点において非常に気持ちの好いものである。その中で最も力説せられているのは「正直」であって、その点、伝統的な思想と少しも変わらないのである・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫