・・・ 株で儲けたと云う須藤が、彼方此方の土地開放の流行の真意を最も生産的に理解しない筈はない。恐らく徳川幕府の時代から、駒込村の一廓で、代々夏の夜をなき明したに違いない夥しい馬追いも、もうあの杉の梢をこぼれる露はすえない事になった。 種・・・ 宮本百合子 「犬のはじまり」
・・・の「黄金の仔牛」の世界は、そういう意味では、ゴーゴリの世界と全くちがう。訳者は「黄金の仔牛」の世界のユーモアを「上からの笑い」だと表現している。「上からの笑い」の真意は、勝利者が上から敗北者にあびせかけた笑いであるというよりは、現実社会の腐・・・ 宮本百合子 「音楽の民族性と諷刺」
・・・ 一方から見ると、誠に当を得たように思われる文化政策なども、軍事教練に反対した汎太平洋婦人平和会議の決議に反対の見解を示している人々の意見とてらし合わせてみて始めて、真意が了解されるというものであろう。 現在われわれが住んでいる社会・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・ それ故米国に於ける原始女性尊重の真意とでも云うべきものは、婦人を実力に於て認め、人格価値の上からは半歩も男子に譲るものではないと云う事実的な結論に加えて、彼等一流の光彩あるロマンティックな輝を添えたものであったのです。 斯様な社会・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ 梶は、日本人の今日の常識にとってさえその真意を汲むに困難な独特日本の義理人情によって知性を否定する怪々な論を、フランス人に向ってくりかえしたのであった。なまじい梶の説明をきいたばかりに、一層フランス人の心で日本が分らなくなり、かくの如・・・ 宮本百合子 「「迷いの末は」」
・・・第一次の大戦というものは、彼等に深刻な社会的な逼迫から人間のつくる列の真意をさとらせていたのだと思う。列は、儀礼と礼節とのためにもつくられるけれど、列が生じるのは、一に対する十の必要が動機である。そこに列の生きて脈搏つ真の動脈がひそめられて・・・ 宮本百合子 「列のこころ」
出典:青空文庫