-
・・・しかしその言の通りにすると、蓑を着よ、そのようなその羅紗の、毛くさい破帽子などは脱いで、菅笠を被れという。そんで、へい、苧殻か、青竹の杖でもつくか、と聞くと、それは、ついてもつかいでも、のう、もう一度、明神様の森へ走って、旦那が傍に居ようと・・・
泉鏡花
「神鷺之巻」
-
・・・老い疲れたる帝国大学生、袖口ぼろぼろ、蚊の脛ほどに細長きズボン、鼠いろのスプリングを羽織って、不思議や、若き日のボオドレエルの肖像と瓜二つ。破帽をあみだにかぶり直して歌舞伎座、一幕見席の入口に吸いこまれた。 舞台では菊五郎の権八が、した・・・
太宰治
「狂言の神」