・・・ しかし、短篇であるにしろ従来の私的身辺小説であるまいとする努力はすべての作家の念頭から離れず、一方で三田伸六、車膳六その他の主人公たちが生まれるとともに、他の一面では多くの作家の眼が、今日の生活の前方や右左へ強い観察を放つよりもむしろ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
先ごろ、ある婦人雑誌で、婦人の公的生活、私的生活という話題で、座談会を催す計画があったようにきいた。何かの都合で、それは実現されなかった。しかし、その話をきいたとき、わたしは、それは面白い話題のつかみかただと思った。提案者・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・ 先生は、いろいろのことを考慮してであったろうが、余り私的なことや感情問題にはふれず、単純に本の話をされた。そして、その本の選択については、年だとか女生徒だとかいうことにかまわず、いきなりこちらの知識慾の理解力とにたよって、教えられた。・・・ 宮本百合子 「時代と人々」
・・・子守女のぶらぶらする様子や、店頭でこごんでたたきを掃いている小僧の姿などが、一瞥のうちに、暖い私的生活の雰囲気を感じさせた。 私は、大抵のとき、前に云った建築敷地の板囲いの前に自分を現した。山の手の住居の方から来る電車の停留場が其処にあ・・・ 宮本百合子 「小景」
・・・今日、大多数の若い人々が、男女にかかわらずそれぞれの恋愛について、私的なことであるが又公的なことでもあるとする一つの公開的態度をもって対する根本には、上述のように、恋愛の含む広い複雑な社会性の意識がいつとなく作用しているからである。 若・・・ 宮本百合子 「成長意慾としての恋愛」
・・・ 今日になってかえりみれば、同盟の先輩たちが当時そのような無批評の状態におちいっていたのには、さまざまの複雑な私的公的のもつれ合った心理的な理由もあったことが私にも分るのであるがその当時は合点が行かなかった。 読者である大衆に対して・・・ 宮本百合子 「近頃の感想」
出典:青空文庫