・・・大衆の多くを語らぬ口と、広く、深く視る便宜を益々縮められつつある眼とは、十分にその由って来るところをも究明しかねる日常生活の悪条件に囚われ勝ちである。政治と民衆とは決して近い隣りにはいない。経済の枢軸の廻転は民衆にとっては増税としてのみ最も・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・プロレタリア文学団体が、過去の創作方法の弱点を理論的に客観的に究明する時間的ゆとり、人的条件を刻々失いつつある一方、各プロレタリア作家の日常的自由は激しく脅かされはじめていたので、新たな社会主義的リアリズムの提案は、それが他の国々で摂取され・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・社会主義的リアリズムにいたる以前の個々の社会事情の現実の究明、日本ならばそこにますます残酷な暴力を示しつつ階級対立があるということを、すりぬけて通る役に立てられた。社会主義そのものが、まだ階級的存在であるというそのことさえ認めなかった。そし・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・学校は、今の社会の風潮が浮薄であるということだけを強調して、その社会的根源を究明しようとする力は持たず、表面的にそのような世相を反撥して地味な制服を着ろとか、家事を見習えとか云い、仏英和女学校などでは女学生のスカートの長さが規定どおりか否か・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・それらのあらましが究明されなければなるまいと思うのである。 アンドレ・ジイドはゴーリキイの誕生におくれること一歳、ロマン・ロオランより三つの年下として一八六九年、パリに生れた。両親は富裕な清教徒であった。十一歳で父に死別した後、病弱な神・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・ 外部からの圧力と共に、文学上の問題としては、かの芸術性の究明が不十分のまま、創作の実際に当って内容と形式が分裂したような形で作家の前にあらわれていたために生じた一種の困難、及び積極的な生活の日常的な現実と作品の創作される過程としての創・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ その国の進歩的な婦人作家たちが、その文筆活動の総体の何割を、文学以前の生活的な諸問題の究明のために費さなければならないかということで、凡そその国の社会情勢が推しはかれると思う。そして、その必要がどのような自由さで満され得ているかという・・・ 宮本百合子 「女性の教養と新聞」
・・・っていた私小説というものが、その主観性のせまい枠と同時的なリアリズムの限界の面から否定をもって見られた当時、そこからより広い生活感と文学とへ出るためには、当然の経過と考えられる方法、私小説における私の究明発展はされなかった。その困難な仕事に・・・ 宮本百合子 「人生の共感」
・・・に新たな拡張を実現しようとしている国内国外の力にとって、日本の人民が心から戦争をきらい、戦争にかり立てられることを拒んでいるその感情を、今日行われている戦争挑発の全過程に対する抵抗として結集し、理性的究明と行動によって立ち上っては不便である・・・ 宮本百合子 「世紀の「分別」」
・・・リアリズムの問題も、プロレタリア文学運動に新たな方向を与えた社会主義的リアリズムについての究明と呼応して取りあげられたのであるが、私たちの注意をひく点は、ブルジョア文学におけるこれらの諸課題=リアリズムの問題も、外国の古典作品の研究、明治文・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
出典:青空文庫