・・・を脱ぎ取って縁側へ並べたり子芋の突起を鼻に見立てて真書き筆でキューピーの顔をかき上げるものもあった。 何か西洋草花の球根だろうと思ったが、なんだかまるで見当がつかなかった。彼はわざわざそれを持って台所で何かしている細君に見せに行ったが、・・・ 寺田寅彦 「球根」
・・・しかし不幸にして特に四十二歳の前後に跨がった著しい突起を見出すことは出来なかった。これだけから見ると少なくもその曲線の示す範囲内では、四十二歳における死亡の確率が特別に多くはないという漠然とした結論が得られそうに見える。 しかし統計ほど・・・ 寺田寅彦 「厄年と etc.」
・・・遥のかなたに小名木川の瓦斯タンクらしいものが見え、また反対の方向には村落のような人家の尽きるあたりに、草も木もない黄色の岡が、孤島のように空地の上に突起しているのが見え、その麓をいかにも急設したらしい電車線路が走っている。と見れば、わたくし・・・ 永井荷風 「元八まん」
・・・「そこのその突起を壊さないように。スコープを使いたまえ、スコープを。おっと、も少し遠くから掘って。いけない、いけない。なぜそんな乱暴をするんだ。」 見ると、その白い柔らかな岩の中から、大きな大きな青じろい獣の骨が、横に倒れて潰れたと・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
出典:青空文庫