・・・ある試験官は「ストラットの答案は多くの書物よりもいい」と云った。 一八六五年の正月に彼は遂に Senior Wrangler の栄冠を獲た。その表彰式に彼の母も参列したが、人々は「我 Senior Wrangler の姉君」のために万歳・・・ 寺田寅彦 「レーリー卿(Lord Rayleigh)」
・・・こうして根本の略筋さえ明瞭に記憶していれば、思想は一貫して、比較的正確の答案が作れることになる。 ひとりこの抜き書きのみにとどまらず、自分は教師がよく黒板へ図解して示す絵図なども、そのまま直接教科書に書き入れておいた。これは記憶する上に・・・ 寺田寅彦 「わが中学時代の勉強法」
・・・あれを読んで人生問題の根元に触れていないから駄作だと云うのは数学の先生が英語の答案を見て方程式にあてはまらないから落第だと云うようなものである。デフォーは一種の写実家である。ロビンソンクルーソーを読んでテニソンのイノック・アーデンのように詩・・・ 夏目漱石 「作物の批評」
・・・この間私が或る地方へ行ったらある新聞でそういう問題を出して小学生徒から答案の投書を募っていました。その中で自分の叔父さんが一番偉いという答を寄こしたのがあると聞いてはなはだ面白く感じました。自分の親父が天下一の人物だなどは至極好い了見で結構・・・ 夏目漱石 「中味と形式」
・・・もしあるとすれば答案を調べずに点数をつける乱暴な教員と同じもので、言語道断の不心得であります。ただ吾は時勢の影響を受けているから、しかじかの理想に属するものを好むと云うならばそれでよろしい。吾は個性としてかくかくの理想の下に包含せらるべきも・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・ 最初の一瞥で、何とも云えず感じの深い而も充分威に満ちた先生の為人を感じた私は、歴史の試験で、年代などを忘れ変な答案を出すと、不思議に心苦しい思いをした。 先生が、試験の点どころか、恐らく学校の成績にさえ、拘泥して居られないことは解・・・ 宮本百合子 「弟子の心」
・・・ 小林古径氏が『いでゆ』によって僕の問題に与える答案は、はるかに興味の多いものである。この画は場中最も色の薄いもので、この点では竜子氏の画と両極をなしているが、しかし日本画として新しい生面を開こうとしていることは、同一だと言ってよかろう・・・ 和辻哲郎 「院展遠望」
出典:青空文庫