・・・「僕たちが世界中になくてもいいってどう云うんだい。箇条を立てて云ってごらん。そら。」 耕一は試験のようだしつまらないことになったと思って大へん口惜しかったのですが仕方なくしばらく考えてから答えました。「汝などぁ悪戯ばりさな。傘ぶ・・・ 宮沢賢治 「風野又三郎」
・・・「私はビジテリアン諸氏の主張に対して二個条の疑問がある。 第一植物性食品の消化率が動物性食品に比して著しく小さいこと。尤も動物性食品には含水炭素が殆んどないからこれは当然植物から採らなければならない。然しながらもし蛋白質と脂肪とにつ・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・今年の新卒業生が有害な制度の犠牲になるのを防ぐために、と職業安定法、労働基準法などの箇条を説明していられます。どのような職業につく人にもあてはまる――つまりことしから就職なさるみなさまのなかのある人々にもあてはまることとして。―― この・・・ 宮本百合子 「新しい卒業生の皆さんへ」
・・・その中心的な箇条の一つは、知識人の社会的評価に関するもので、従来社会的にも文学的にも知識人一般というものが抽象的にこの世の中に在るのではなくて、歴史と社会の層に属して現実を生きつつあるものだと云われ、従って歴史に対する知識人の進歩的な態度、・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・夜のお化粧とか朝のお化粧とかそう云う化粧読本の箇条としての一般論みたいなものは行き渡っているようだけれども、もっと自分に即して、自分の気持をとらえているという風のおしゃれは、まれに思えます、それは一応通ななり、凝ったなり、或はシークななりと・・・ 宮本百合子 「女性の生活態度」
・・・熱心に知っているかぎり説明した。箇条を見てわかるように、彼女たちは、農村ソヴェトのために活動する者としてのはっきりした立場から問いを出している。 相当しゃべって、ひとりでにみんなが黙った。突然、 ――日本にも、女房をなぐる亭主が沢山・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・たった三箇条。 講釈師大谷内越山の訛 金色夜叉「昔の間貫一は死ですもうとる」 小酒井博士 ひどい肺病 妻君 かげで女中をしかりつけ、夫のところへ来ると、まるでわざとらしい微笑をはなさず・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・然るにここに書いた四箇条の誤訳は、皆極平易な句に過ぎぬ。そうでないのは所謂「とがき」などである。今後は難渋な句の誤訳をも、もしどこかにあったら、発見して貰いたい。私は訳本ファウストを読まれる人達に、一層深い望を属している。・・・ 森鴎外 「不苦心談」
・・・ そんなら翻訳の凡例はどうかと云うに、私は実際凡例として書く程の箇条を持っていない。総てこの頃の私の翻訳はそうであるが、私は「作者がこの場合にこの意味の事を日本語で言うとしたら、どう言うだろうか」と思って見て、その時心に浮び口に上ったま・・・ 森鴎外 「訳本ファウストについて」
・・・『朝倉敏景十七箇条』は、「入道一箇半身にて不思議に国をとりしより以来、昼夜目をつながず工夫致し、ある時は諸方の名人をあつめ、そのかたるを耳にはさみ、今かくの如くに候」といっているごとく、彼の体験より出たものであるが、その中で最も目につくのは・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫