・・・れるという場面が一種の伏線となっているので、それでこそ後にポーラの楽屋のかもし出す雰囲気の魅力が生きて働いてくるように思われるが、この芝居には、そういったようなデリケートな細工などは一切抜きにして全く荒削りの嘆きの天使ができあがっているよう・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・ なぜなら、この作家の作品にめだつ誇張は、思わず知らず作者の若さが溢れ出したという種類のものでもないし、荒削りな北方の自然にかこまれた田舎の人の重いきつさというものでもない。ずっと計画性のひそんだものとして私どもにはうつる。作者が、制作・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・昔プロレタリア文学の初期、勤労者の文学といえば、精力あまった荒削り、俺ら働くもの式の力み、ある低さくらさがつきものでした。推薦者徳永さんの前書に、「私は二十年前の若い労働者作家として感慨をもって思いくらべながら、現代の青年労働者作家を読者の・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・それが重苦しくて、荒削りなのはゴーリキイ自身にも感じられた。けれども、ゴーリキイにとって「自分の思想の最も深い渾沌を表現するのには」ほかならぬ自分の言葉で語るしかなく思われ、しかも、ゴーリキイは自分の詩を書く場合、彼を「いら立たせている何も・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・それが重々しくて、荒削りなのはゴーリキイ自身にも感じられた。けれども、自分の言葉で語ることによってのみ「自分の思想の最も深い混乱を表現出来るように思われ」しかも、ゴーリキイは、その詩を、彼を「いらだたせる何ものかに抗議する意味で殊更粗暴なも・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
出典:青空文庫