・・・字の伝統的感覚においても美しくしかもそのままローマ綴にしたとき、やはり世界の男が、この日本名の姓を彼らの感情に立って識別できるように扱われているところにも、私は鴎外の内部に融合していた西と東との文化的精髄の豊饒さを思う。この豊饒さは、ある意・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
・・・ ほんの一部の例にすぎないこれらの作家たちは、芸術家としての精髄を注いで、虐げられた稚い肉体と精神のために代弁している。時代をとびこして今日の私たちの心をしっかりととらえる情熱を傾けて、いずれもその作家たちの代表的な作品として生み出して・・・ 宮本百合子 「若き精神の成長を描く文学」
・・・現代の苦しい社会的矛盾の間に生きて、ゆがむまいと欲する人間の努力を全面的に支持し、発展させる熱意こそ、今日のヒューマニズムの精髄であらねばならないと思うのである。〔一九三七年四月〕 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
愛読という言葉の普通の使いかたとは違うけれども、非常に感銘をもってよみ、人類の歴史の精髄を学んだ二つの本をあげます。 エンゲルス著「家族・私有財産及国家の発生」 同 「空想から科学へ」 前者は、題名がこ・・・ 宮本百合子 「私の愛読書」
・・・仮面に精髄を抜き去ったる肉骸を覆うてごまかさんとするは醜の極みである。血なき大理石の像にも崇高と艶美はある。冷たきながらも血ある「理性権化」先生は蝦蟇と不景気を争う。この道徳の上に立つ教育主義は無垢なる天人を偽善の牢獄に閉じこむ。人格の光に・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫