・・・ 春ちゃんは無口な大人しい子供で、成績もよく級長であったから、やはり女の方の級長をしている雪子という蒼白い顔の大人しい娘を「おれの娘」にしていたが、思わず、「うん」とうなずいて、その日から安子の「好い人」になってしまった。 その日学・・・ 織田作之助 「妖婦」
・・・高等科一年の級長の書いたものだそうである。原文のまゝである。――私はこれを読んで、もう一息だと思った。然しこの級長はこれから打ち当って行く生活からその本当のことを知るだろうと考えた。――一九三一・一二・一○――・・・ 小林多喜二 「級長の願い」
・・・学問は好きだったから出来る方の組で、副級長などもやったことがあるが、何しろ欠席が多かったから、十分には勤まらない。先生はどの先生も私を可愛がってくれたし、欠席がつづくと私の家へ訪ねてきてくれたりした。しかし私には同級生の意地悪共が怖い。意地・・・ 徳永直 「こんにゃく売り」
・・・聞くところによれば現代の小学生は小遣銭を運動費となして、級長選挙の事に狂奔することを善事となしているというではないか。 市中行賈の中、恰も雁の去る時燕の来るが如く、節序に従って去来するものは、今の世に在っても往々にして人の詩興を動かす。・・・ 永井荷風 「巷の声」
・・・二学期には級長にさえなったのでした。その代りもうキッコの威張りようと云ったらありませんでした。学校へ出るときはもう村中の子供らをみんな待たせて置くのでしたし学校から帰って山へ行くにもきっとみんなをつれて行くのでうちの都合や何かで行かなかった・・・ 宮沢賢治 「みじかい木ぺん」
・・・ ずいぶん日本のそういうところと様子が違うでしょう? ソヴェト同盟では小学校からズッと生徒に自分たちの力で級の仕事をやってゆくように育てられています。 級長なんかというスマした優等生が、先生の小さい出店みたいなことをするのではな・・・ 宮本百合子 「従妹への手紙」
・・・ 級長なども、これ迄は、どんな工合に選んでいたのでしょうか。先生が指名しましたか。其とも級として自由に選んだでしょうか。級として自由に選ぶことが出来たのなら、自分たちの選んだ級長にあき足りない点があるとき、それはとりも直さず、そういう不・・・ 宮本百合子 「美しく豊な生活へ」
出典:青空文庫